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あきのはんしゃ
秋の反射
宮本 百合子
「ウーマンカレント」1926(大正15)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,234 字 · 9 页
沢や婆さんの存在もその通りであった。村人は、彼女が女であって、やはり金や家や着物がないと暮して行けない――自分と同じ人間であることも忘れたようになって、或る時は呼んで按摩をさせた。或る時は留守番をさせ、或る時は台処の土間で豆をむかせた。何かさせれば、大抵その晩は泊めてやった。勿論食事もさせる。場合によっては金もやったが、沢や婆は、ちゃんと金の貰えるようなことは何一つ出来なかった。村では、子供でも養蚕の手伝いをした。彼女は、
「私しゃ、気味がわるうござんしてね、そんな虫、大嫌さ」
と、東京弁で断った。縫物も出来なかった。五月には、
「お百姓なんて辛いもんだね、私にゃ半日辛棒もなりませんや」
と、肩を動して笑った。――本当にこの永い一生、何をして生きて来たんだろう。村の人は、土地に馴れたという丈でやっと犬が吠ないような身装をし、食べ歩いて生きている癖に、高く止っている婆さんを軽蔑した。誰からも愛されず、内心では互にさげすみつつ、食物のたっぷりした処を探しては自分で食って来るので、どうにか此年月が過て来た。
二
この瞬間が、いつ迄続くものだろう。