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あきのはんしゃ

秋の反射

宮本 百合子

「ウーマンカレント」1926(大正15)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,234 字 · 9 页

青空文庫

真先にここに気づいた仙二は、さすが青年団の口ききだけあった。彼は、役場に用事があった時、戸籍係に、沢や婆さんの戸籍を調べて貰った。彼は三十四年目で始めて、彼女が有坂イサヲと云う姓名で、籍は二里近く離れた柳田村にあることを知った。

此那奇蹟的関心が沢や婆に払われるには原因があった。仙二の家の納屋をなおした小屋に沢や婆は十五年以上暮していた。一月の三分の二はよその屋根の下で眠って来た。夏が去りがけの時、沢や婆さんは腸工合を悪くして寝ついた。何年にもない事であった。一日二日放って置いた仙二夫婦も、四日目には知らない顔を仕切れなくなった。女房のいしが、

「婆さま、塩梅どうだね」

と尋ねて行った。彼女は間もなく戻って、気味わるそうに仙二に告げた。

「――あの婆さま――死ぬんじゃあんめえか」

「そんなか?」

「なんだか――俺やあな気がしたわ」

仙二が行って見た。翌朝、彼はぶっきら棒にいしに命じた。

「飯炊くとき、おねばりとってやんな」

その次の日又重湯を運んでやり、歩けるようになる迄、粥をやるのがいしの任務であった。仙二は、苦笑しながら半分冗談、半分本気で云った。

「あげえ業の深けえ婆、世話でも仕ずに死なしたら、忘れっこねえ、きっと化けて出よるぜ」