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かがくほうほうろん

科学方法論

戸坂 潤

「科学方法論」岩波書店、1929(昭和4)年6月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,035 字 · 284 页

青空文庫

――併し今私が世界と呼ぼうとするものはこのような意味での世界ではない。之とは反対に又之とは異って、事物がその内部に於て位置を占めるに先立ってまず予め存在すると考えるのを許すことの出来る処の、或る特殊の幾つかの存在が吾々の云う世界である。初めに必要なことは、世界が、諸々の事物がその内に存在しそれにぞくすることの出来るような、事物の存在の仕方を云い表わす一つの存在概念であることである。同一の事物が様々の世界にぞくするものとして自らを見出し得るので、様々の世界は事物を媒介として互いに交錯することが出来る、それは単に相互の限界を有つのではない。自然・歴史・社会等がこのような世界であるが、実際同一の事物も自然にぞくするものとして、又同時に歴史に、社会に、ぞくするものとして、現われることが出来るであろう。凡ての個々の事物は或る意味に於て、此等世界の任意の一つにぞくすことが出来る、各々の世界は凡ての個々の事物を包括し支配することが出来る。故に世界はこの意味に於ける普遍性を有つことをその特色とするのである。

世界の概念は決して専門的研究を俟って発生した概念ではなくして、人々が日常所有している一つの基礎概念であるであろう。