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かがくじちょう

科学時潮

海野 十三

「新青年」1928(昭和3)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,486 字 · 5 页

青空文庫

遠方からそこを望遠鏡で覗いた者の話によると、人間の白骨ばかりでなく、時々紛れ込んで来る熊や鹿や其の他の動物の屍や骨が夥しく死の谷の中に散見するそうである。

この死の谷の不可思議な謎を解くために学者の一団が探検に赴くことになる。一行は二人の死刑囚を同行した。これは死の谷への先登をやらせるためで、万一危険が生じて来てもこの二人の死刑囚が先ずどうかなる筈で、所謂パイロット・ランプの役目を演ずるわけである。

で、一行は愈々死の谷へ発足した。山又山を越えて、軈て死の谷の近くへ来た。一行は望遠鏡の力を借りて観測した。白い蒸気のようなものが飛散している。附近の草木は枯死し、鳥獣の死屍も累々たるのが見えた。不図、死の谷へ下りようという峠のあたりに人影が見えた。人間らしくはあったが正しく怪物であった。一行中の気早の若者が、射撃を加えた。人影は峠の彼方に消えた。一行はこれをきっかけに戦闘準備を整えて、二名の死刑囚を先登にして、まっしぐらに、峠へ駈け上がって見た。

怪人を射止めた辺りを探したが、その姿はなかった。唯、望遠鏡で見覚えた岩のあたりには、緑色の汚点が方々に夥しくついていた。