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かがくろん
科学論
戸坂 潤
「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页
実際リッケルト達は恐らくそう云った想定に基いて方法論を考察したのかも知れない。だが物理学的物質元素そのものが、実は歴史的所産だということを、今思い出さねばならぬ。今日宇宙に九十幾つかの元素が発見されることは、全く宇宙の歴史的発展過程に於ける今日の段階の、云わば偶然的な(偶然論者に云わせれば)安定状態にすぎない。今日の原子物理学は、要するに元素の歴史的研究の基礎を築くものだと云っても、云い過ぎではないだろう。
無論自然の歴史と社会の歴史との間には、根本的な相違が存する。だがそれは二つの間に絶対的なギャップがあるということとは全く別だ。自然と社会とは一つの歴史によって貫かれている。自然が歴史的発達によって社会を生み、そこで初めて自然と社会とが平行したり交渉し合ったりすることになったというわけである。――で、科学の分類はこの客観的な関係から導かれねばならない。そうではなくて偶然眼の前に与えられた諸科学の総体を、アトランダムに分類したり、又は偶然時事的に問題化した某々科学に中心を置いたり、或いは相当勝手な認識主観から科学の方法を導いて之を分類の原理にしたりすることから、科学論乃至科学方法論の収拾すべからざる乱雑さが発生したのである。