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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

この法則そのものが他の特殊な形態へと変化することとを、除外するものではない。特に社会に於ける「歴史的」法則は、今のこの関係を顕著に示している。法則は常に普遍的なものだ。そうでなければ決して法則の名には値いしない。だがそれが生きた法則であるためには、いつも自身が特殊だという自分の影を背負っている。この影を飛び越えることは出来ない。ドイツのロマン派文士シャミッソーは、影のないシュレーミール氏を創造したが、「科学方法論」者や社会科学対自然科学の方法分裂政策家達は、自然科学に向って絶対普遍的な「法則」を創造して押しつけたのであった。

尤も経験的法則と云えば、つまりは経験の組織体である科学の一認識内容に過ぎないのだが、併しこの法則が根本的な場合になればなる程、即ちこの法則が科学の前進に於て有つ経験指導の指導範囲が広ければ広い程、法則は原則に接近する*。原則は殆んど完全に科学そのものを指導するように見える。だから原則はそれ自身方法のことであるとも見做されている。因果律(因果法則)は実は因果原則乃至因果性と呼ばれる方が適切だろう。相対性原理や不確定性原理は、もはやただの経験的法則(Gesetz)ではなくて、こうして諸法則そのものを制定させる処の原則(Prinzip)なのである。