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かがくろん
科学論
戸坂 潤
「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页
そうしなければ社会的通用性を有たないのである。このために必要なのが叙述方法であって、之は研究方法とは逆に、すでに抽出された何等か一般的な関係から出発して、之を個々の事象にまで体系的に展開するという方向を取る。
研究方法の方は云わば極めて専門技術的な様式を有った方法であるが、叙述方法の方は云わば広義に於ける文献的=文学的な様式を有つ。例えば実験は研究方法の一部となって機能するが、この実験の結果を報告することは、叙述方法にぞくする。叙述と云えばどのような場合でも広義に於て文学的なものであらざるを得ない。少くとも言葉や文字や補助文字としての記号などを用いなければ、叙述は出来ないからだ。――だがこの二つの方法は(私は之を後の便宜のために様式――研究様式と叙述様式――と呼ぶことにする)、交互的な連関を有っている。というのは如何なる叙述様式も予め研究様式があっての上でなければならないのは当然だが、それだけではなく逆に、発達した一切の研究様式はいつも夫々先行する叙述様式を想定せずには成立しないのである*。例えばどのような自然科学的実験的研究でも、それまでの自然科学の歴史的発達(それは書物や文献や教育によって保維される)を想定した上でしか形を有ち得ない、ということに他ならない。