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かがくろん
科学論
戸坂 潤
「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页
スペクトルによる実験が天体に於ける一定の元素の存在を証明するということは、気体元素の光波吸収の理論と合成光線の分光の理論とに俟つことは云うまでもないが、こうした理論が科学的な既知の知識として伝承され得ることは、全く科学の叙述様式が与える賜である。その意味に於て叙述様式は云わば文献的=文学的な方法だというのであって、特に哲学や社会科学に於けるこの様式の役割は、意外に大きいと云わねばならぬ*。二つの諸様式はだから交互に想定し合っているということを、予め注意しておかなくてはならぬ。
* 哲学に於ける叙述様式は、往々にしてその研究様式と混同されたり之に代用されたりし勝ちである。こうして哲学の或るものは全く文学的作品或いは寧ろ作文の性質を有ち易い。叙述様式がそのまま実在の体系だと考えたものは代表的なドイツ観念論者フィヒテであった(その『知識学』)。――それから自然科学は、その叙述様式の不整備のために、往々にしてその専門的研究から無意味な他愛のない人文的諸理論を導き出しがちだ。叙述様式は根本概念=範疇を表面に出して用いなければならないのだが、そのための普遍的な範疇組織のどれに、科学性があるかは、哲学の理論的な研究に負うわけで、そこに専門科学者の躓きがちな閾があるのである。