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いのうはりまのかみ
稲生播磨守
林 不忘
「講談倶楽部」講談社、1935(昭和10)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,172 字 · 29 页
刀をぶつけた侍 かようなやくざな刀がお眼に留まるとは、恐縮です。とてもお歴々の見参に供えるようなものではござりませぬが、お望みとあらば、お安い御用。どうぞ御覧を。
と人手をとおして、その刀を順送りに渡す。
受け継ぐ人々 ほほう、小柄は祐乗ですな。
おなじく二 糸輪覗き桔梗の御紋は、これは御家紋で?
同三 彫りは、肥後の林重長と観ましたが。
四 いや、お眼がお高い。
五 この鍔は、明珍の誰でござりますな?
所有主 義房作とか、伝えられておりますが、いや、お恥かしいもので。
一見を所望した侍 (受け取って)結構な蝋色鞘ですな。失礼ながら、いい時代がついておりますて。ほ! お鍔の彫りは、替り蝶の飛び姿! いや、凝った凝った、大凝りですな。こうなると、ぜひ刀身が拝見したくてぞくぞく致してまいる。お刀は?
所有主 いや、つまらぬもので。会津でござる。
座の一人 会津と申しますと、兼定? それとも、三善か若狭守か――。
所有主 兼定でございます。
播磨 初代か。
所有主 はっ。いえ、五代目でござりまする。
刀相家久保奎堂 すると、近江大掾となった元禄の兼定ですな。
刀を見ている侍 その兼定ならば、定めし大物でしょう。