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いのうはりまのかみ

稲生播磨守

林 不忘

「講談倶楽部」講談社、1935(昭和10)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,172 字 · 29 页

青空文庫

などと、片端から片づけてゆく。そのうちに、鞘を払ったとある一刀にじっと見入って、おや! という思い入れ。一座に、さっと真剣の気が流れる。

奎堂は無言で、長いこと凝然とその刀相を白眼んだ後、ただならぬ面持ちで近くの燭台の下へ急ぎ、灯にかざして改めてとみこうみする。

奎堂 (驚愕狼狽の表情で呻く)ううむ!

矢沢 (愕いて)いかが召された。何かその刀に、御不審の点でも――。

奎堂 (はっと心づきたる態)いや、なに――ははははは、何でもござらぬ、ははははは。

強いて笑いに紛らそうとしながら、しきりに首を捻る。

奎堂 (まだ刀を見詰めながら、思わず知らず)はてな? よもや――しかし、どう観てもこの線の切れが――(強く自分へ)いや! さようなことのあるべきはずはない。わしの気の迷い、気の迷い――。

恐しそうにその刀を下へ置き、次ぎを取り上げる。

奎堂 (虚ろな声で)これは吉相――。

言いかけてまた前の一刀を手にとる。

奎堂 うむ! そうだ! たしかに! ――いやいや! わしの眼の曇りであろう。恐しいことじゃ。

投げ捨てるようにその刀を置いて、つぎを取ろうとする。その手は顫えている。