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くうちゅうひょうりゅういっしゅうかん

空中漂流一週間

海野 十三

「名作」1939(昭和14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,324 字 · 35 页

青空文庫

ところがその灯は、どれもこれもしきりに十字を描いているのだった。

十字火信号! ああそれは「要注意」の信号であったではないか。

「なにが『要注意』なんだ!」

と、「火の玉」少尉は、小さくなりゆく地上の灯をみつめていた。

「要注意」の信号

「火の玉」少尉が、空中の異変に気がついたのは、それからしばらくして、風の中に××陣地のサイレンの響を聞き、それに続いて××陣地にありったけの照空灯が、彼の乗った気球の方に向けられたときだった。

それまでのところは、彼は地上員が多忙の中を駈けつけて、彼のために繋留気球第一号の綱をゆるめてくれたものとばかり考えていた。

ところが、それから後のサイレンやら照空灯のものものしい騒ぎがはじまるに及んで、彼はやっと或る疑惑を持ったのである。

「おかしいなあ。一体地上ではなにを騒いでいるのだろう」

彼の外に、誰も乗らないといっていたが、やはりまだ乗る者があったのではなかろうか。それで「要注意」などと騒いでいるのではなかろうか。

だが、それにしては、なぜ「出発待て」の信号を発しなかったのであろうか。「要注意」の信号は、どうも腑におちない。