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くうちゅうひょうりゅういっしゅうかん

空中漂流一週間

海野 十三

「名作」1939(昭和14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,324 字 · 35 页

青空文庫

戸川中尉は、この事件の前から六条少尉に分れて司令部へ出張していたので、以来彼は会わずじまいだった。

「そうだ。俺にはまだ左腕もあれば両脚もあるし、硬い歯の生えている口もあれば、太い頸もあるというんだ。その意気は壮とするが、こればかりはねえ」

そういっているとき、受付の方角から、大きな蛮声がこっちへ響いてきた。田毎大尉と戸川中尉とは、思わず顔を見合せた。

「しかたがない。おい当番兵。六条少尉をここへ案内してこい」

田毎大尉は、ついにそういった。

「大尉どの。自分もここに居てよろしくありますか」

「ああ、よろしい。ぜひそこにいて、『火の玉』少尉を慰めてやってくれ」

間もなく、当番兵につれられて、部屋へ入ってきた壮漢、見れば警防団服に身を固めていて、ちゃんと右手もついている。

新しい警防団員

「おう、そのいでたちは……」

と、田毎大尉がいぶかるのを、壮漢はうやうやしく右手で挙手の敬礼をして、

「はあ、きょうは大尉どのに、この姿を見ていささか意を安んじて頂こうと思って参りました」

「おお、これは戸川――戸川中尉どの。ずいぶん久しぶりでありましたな」

そういう壮漢は、やっぱり「火の玉」