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くうそうにちろく
空想日録
寺田 寅彦
「改造」1933(昭和8)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,488 字 · 21 页
そうした不平をいう弟子にはまた当然独創力に乏しい弱い頭の持ち主が多いわけである。もし独創力のある弟子なら、そんな些細なものを先生にくれてやっても、自分の仕事は目の前にいくらでもころがっているからである。
陶工が陶土およびその採掘者に対して感謝の辞を述べる場合は少ない。これは不都合なようにも思われるが、よく考えてみると、名陶工にはだれでもはなれないが、土を掘ることはたいていだれにでもできるからであろう。
独創力のない学生が、独創力のある先生の膝下で仕事をしているときは仕事がおもしろいように平滑に進行する。その時弟子に自己認識の能力が欠乏していると、あたかも自分がひとりで大手を振って歩いているような気持ちがするであろう。しかし必ずしもそうでないということは、ひとたびその先生のもとを離れて一人立ちで歩いてみればすぐになるほどと納得されるのである。しかし性のいい弟子は、先生の手足になってきげんよく元気に働いている期間にすっかり先生の頭の中の原動力を認識し摂取してわが物にしてしまう。そうして一本立ちになるが早いかすぐに自分の創作に取りかかる。これに反して先生が自分の仕事を横取りしたといって泣き言を言うような弟子が一本立ちになって立派な独創力を発揮する場合はわりに少ないようである。