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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
と、長造が云った。
「お母ア様、工場へ電話をかけたらどうです」黄一郎が云った。
「それもそうだが、弦の居るところは、夜分は電話がきかないらしいんだよ」
「なーに、彼奴清二の二の舞いをやりかかってるんだよ。うちの子供は、不良性を帯びるか、さもなければ、皆気が弱い」
父親はウッカリ、平常思っていることを、曝け出したのだった。今日は云うのじゃなかった、と気のついたときは既に遅かった。一座は急に白けかかった。紅子は、断髪頭を、ビューンと一振りふると、卓子の前から腰をあげようとした。
「唯今――」
詰襟服の弦三が、のっそり這入ってきた。なんだか、新聞紙で包んだ大きなものを、小脇に抱えていた。
「まあ大分ひまが懸ったのね。さァ、こっちへお坐り。お父様がお待ちかねだよ」母親が庇うようにして、弦三の席に刺身醤油の小皿などを寄せてやった。
「――」弦三は無言のまま、席についた。
「弦おじちゃん、大変でしたね」嫂の喜代子も、お妻について弦三を庇った。「さあ、ミツ子、おじちゃん、おかえんなさいを、するのですよ」
ミツ子は母の膝の上で、肥った首を、弦三の方にかしげ、怪訝な面持で覗きこんだ。