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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

ミツ坊までが、若いお母アちゃんの膝の上で、ロボットのようにピンピン跳ねだした。

「贅沢を云いなさんな」長造は微苦笑して、末ッ子達を押えた。

「お父様は、お前達を大きくするので、一杯一杯だよ。皆が、もすこししっかりして、心配の種を蒔かないで呉れると、もっと働けて、そんなお金が溜るかもしれない。これ御覧、お父様の頭なんざ、こんなに毛が薄くなった」

父親が見せた頭のてっぺんは、成る程、毛が薄くなって、アルコールの廻りかけているらしい地頭が、赤くテラテラと、透いて見えた。

「お父様、そりゃ、お酒のせいですよ」黄一郎がおかしそうに口を出した。

「ほんとにね」お妻が同意して云った。「あなた、この頃、ちと晩酌が過ぎますよ」

「莫迦ッ。折角の訓辞が、効目なしに、なっちまったじゃないか!」口のところへ持ってゆきかけた盃を途中で停めて、長造は破顔した。

「はッはッは」

「ふ、ふ、ふ」

「ほッほッほ」

それに釣りこまれて、一座は花畑のように笑いころげた。

どよめきが、やっと鎮まりかけたとき、

「それにしても、弦三は大変遅いじゃないか。昨夜は、まだ早かった。この間のように、十二時過ぎて帰ってくる心算なんじゃ無いかなあ」