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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

言わずと知れた「狼」の配下の者だった。

「狼」も運転台から、泥まみれになって降りて来た。その手には、ブローニング拳銃を握って、こっちを睨んで立った。

こっちには、後藤運転手の手に、軽機関銃が握られていた。

「手をあげろッ」大尉は怒鳴った。

いくら大胆不敵な者共であっても、機関銃には叶う筈が無かった。彼等は、静かに手をあげた。

「オイ狼」大尉は降服者の前に立った。「いよいよお気の毒な運命になったネ。ところで戸波博士を渡して貰いたい」

「戸波博士は亡くなられた」狼が沈痛な面持をして答えた。

「えッ、博士は亡くなられたというのか。帝国の運命は、遂にああ……」

「莫迦を云うなッ、卑劣漢」狼のうしろから帆村が怒鳴った。

「大尉どの、博士は健在です。牛乳車の奥に、監禁されていましたぞォ」

「なに、博士が……」

なるほど頤髯に見覚えのある戸波博士が、帆村の手によって牛乳車の中から助け出されていた。

「やッ」どこに隙間を見出したのか、「狼」は大尉の脇の下をくぐって、猛然と博士の方へ飛び掛った。

「なにをッ」山太郎が横合いからムズと組付いた。

この機会を外してはというので「狼」の配下は、一度に反抗してきた。