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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

水牛のように大きな図体をもった艦長の胸のなかを、一センチほど、截りひらいてみたかった。

舳手のところへは、なにか頻々と、命令が下されているのがエンジンの響きの間から聞こえたが、何んな種類の命令だか判らなかった。

だが、間もなくジーゼル・エンジンがぴたりと停って、清二の居る電動機室が急に、忙しくなった。

「界磁抵抗開放用意!」

伝声管から、伝令の太い声が、聞こえた。

清二は、開閉器の一つをグッと押し、抵抗器の丸いハンドルを握った。そしていつでも廻されるように両肘を左右一杯に開いた。

「界磁抵抗開放用意よし!」

真鍮の喇叭口の中に、思いきり呶鳴りこんだ。

「開放徐々に始め!」

推進機に歯車結合された電動機の呻りは、次第に高くなって行った。艦体が、明かに、グッと下方に傾斜したのが判った。深度計の指針が静かに右方へ廻りだした。

「十メートル、十五メートル、……」

深度計の指針は、それでもまだ、グッグッと同じ方向に傾いて行った。

艦底の海水出入孔は、全開のまま、ドンドンと海水を艦内に呑みこんでいるらしかった。

このままでは海底にドシンと衝突かるばかりだと思われた。