轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
鉄工場には、官設といわず、民間会社と云わず、三千度の溶鉱炉が真赤に燃え、ニューマティック・ハンマーが灼鉄を叩き続け、旋盤が叫喚に似た音をたてて同じ形の軍器部分品を削りあげて行った。
東京の街角には、たった一日の間に、千本針の腹巻を通行の女人達に求める出征兵士の家族が群りでて、街の形を、変えてしまった。だが其の腹巻の多くは、間に合わなかったのだった。それは通行の女人達が、不熱心なわけでは無く、東京に属する師団の動員が、余りに速かったのである。
或る者は、交番の前に、青物の車を置いたまま、印袢纏で、営門をくぐった。また或る者は、手術のメスを看護婦の手に渡したまま、聯隊目懸けて、飛び出して行った。
事態は、市民の思っている以上に切迫していた。品川駅頭を出発して東海道を下っていった出征兵員一行の消息は、いつの間にか、全く不明になってしまった。
其のあとについて、品川駅を通過してゆく東北地方の出征軍隊の乗った列車は一々数えきれなかった。夜間ばかりでは運搬しきれないものと見え、真昼間にも陸続として下って行った。東北地方の兵営が、空になるのではないかと、心配になるほどあとからあとへと、出征列車が繰りこんできたのだった。