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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

あっても、なくてもいいような電灯は、前から消して置く。これが警戒管制です。僕、受持は、水の公園と、あの並び一町ほどの民家なんです」

「民家!」長造はニヤニヤ笑い出した。「生意気な言葉を知ってるネ。じゃ、行っといで。遊びじゃないんだから、乱暴したり、無理をしちゃ、駄目だよ」

「うん、大丈夫!」

少年は、ニッと笑うと、そのまま脱兎の如く駈け出して行った。

長造が店頭を入ると、そこにはお妻が、伸びあがって、往来を眺めていた。

「おや、おかえりなさい」

「うん」

「外は大変らしいのね」

「そうよ、お前」長造は、ふりかえって店の前を眺めたが、警戒場所に急ぐらしい若人の姿を、幾人も認めた。

「なんしろ、警戒管制になったんだもの」

「警戒管制では、まだ電灯を消さなくていいのでしょうか」

お妻が訊いた。

「そりゃ、ソノお前、警戒管制という奴は、だッ……」

そこへバラバラと少年が駈けこんできた。

「警戒管制ですから、不用の電灯は消して置いて下さい。この門灯は直ぐ消えるようになっていますかッ」

「ええ、直ぐ消えるように、なってますよ。おや、波二さんじゃないの」

「ああ、下田のおばさんの家だったネ」