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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

では、今のうちに、こっそり、失敬するとしよう。それにしても、米軍の攻撃は、莫迦に、ゆっくりしているじゃないか」

彼は、裏口へ遁げようとしては、不審の面持で耳を澄した。だが、彼の予期するような爆弾投下の爆音は、一向に、響いてこなかった。

「おかしいぞ。どうしたのだろう」

そのとき、囂然たる爆声が起った。一発又一発。それに交って、カタカタという機関銃の響きだった。

「やったナ。だが、爆弾と、すこし音が違うようだ」

彼は、逃げ腰になった。

「鬼川君は、いないですか、鬼川君」

誰かが、向うの放送室で呼んでいる。返事をしようか、どうしようか。

「……」

「鬼川君、軍隊だッ。救援隊らしいのが、山を登って来ますぞ。早く指揮をして下さい。鬼川くーン」

鬼川は、物も言わずに、裏口へ急いだ。

「やッ」

カーテンの蔭から、太い逞しい腕がニューッと出た。鬼川は横腹をおさえて、もろくも、転倒した。

カーテンの蔭から、ルパシカ姿の巨漢が現れた。

「中佐どの、片附けました」

彼は、カーテンの蔭に言葉をかけた。

カーテンが、揺れて、思いがけなく、司令部の、湯河原中佐が、顔を出した。

「塩原参謀」