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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
と中佐は、呼んだ。ルパシカ男は、いつの間にか局舎から姿を消していた塩原参謀の仮装だった。
「この男を、吾輩に預けてくれんか」
「おまかせいたします」参謀は、直立して言った。「ですが、中佐殿は、これから、どうされます」
「吾輩は、司令部の穴倉へ、こいつを隠して置こうと思う。司令官に報告しないつもりじゃから、監禁の点は、君だけの胸に畳んで置いてくれ給え」
「しかし、斯くの如き重大犯人を、司令官に報告しないことはどうでありましょうか」
「吾輩を信じて呉れ。二十四時間後には、この事件について、必ず君に報告するから」
「判りました。では、急速に、御引取下さい」中佐は、大きく肯くと、鬼川の身体を肩に担いで、カーテンの蔭に、かくれてしまった。
そのころ、放送局の表口では、暴徒の一団と、警備軍の救援隊とが、物凄い白兵戦を展開していた。
全市に、点灯を命令して、米軍に帝都爆撃の目標を与えるという放送局襲撃の第一目標が、どういう手違いか、すっかり外れ、生き残りの団員は、戦闘の間々に、爆弾の炸裂音を聞きたいものだと焦ったが、その期待は、空しく消えてしまった。
彼等の地位は、だんだんと悪くなって、元気は氷のように融けていった。