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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

今まで何をしていたのか、ハッキリはしないけれど、とにかく、焼け落ちた家の下じきになったはずの姉と正坊の名を、あらんかぎりの声をしぼって呼びまわっている時、救護団の人たちが駈けつけたこと、そのうち逃げてくる人波に押しへだてられてしまったことだけが残っていた。それから先、どうして逃げたかわからない。

どうやらあまりの惨事に、しばらく気が変になっていたものらしい。

(ああ、姉さんや正坊はどうしたろう。これもみな、町のひとたちが、焼夷弾が落ちたらどうすればいいかを知らなかったせいだ。敵機も恐ろしいには違いないけれど、防護法を知っていたらこんなにはならなかったであろう?)

旗男は心配と口惜しさで、腸がちぎれるように感じた。

あたりをみまわすと、後にしてきた直江津の町は、まだ炎々と燃えさかっていた。しかし、さっきまでは活発に聞えていた高射砲のひびきは今は聞えない。僅かに高田市あたりと思われる遠空に、たった一本の照空灯がピカリピカリと揺れているばかりだった。――どうやら敵機はさったらしい。だが非常管制はそのまま続けられているらしい。

「元気を出さなきゃあ……」

と、旗男は自分自身にいいきかせた。