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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

「さあ、いま笛の鳴っている方角に歩いて下さい。この方角は駅の前へ出ます。……さあ、皆さん元気で、頑張って下さい。祖国のために……」

群衆のざわめく姿が、火事を照り返した空のほの明るさで、それと見られたが、かなり集っている。それだのに、これはさっきの群衆とちがって、なんという静粛な人たちだろう。落ちついているのと、あわてているのは、こうも違うものかとおどろいた。

旗男は、暗夜の交通整理のおかげで、思いがけなく駅の前に出ることができた。それは春日山駅といって、直江津と高田との中間にある小駅だった。ちょうど東京方面へゆく列車が出ようという間ぎわだった。町を守らねばならぬ義務をわすれて逃げだすような人たちは断られたが、旗男のように、東京方面へ帰るわけがある人たちは、プラットホームへ入れてくれた。

旗男は、思いがけないほど都合よく汽車に乗りこむことができた。

――東京はどうだろう? 病身の両親や、幼い弟妹などが、恐ろしい空襲をうけて、どんなにおびえているだろうか。

疾走する暗黒列車

空襲をうけたといって、すぐ交通機関が停るようでは、ちょうど、手術にかかったとたんにお医者さまが卒倒したのと同じように、たいへんなことになる。