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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

それに構わず、鍛冶屋さんはすっと立ちあがった。

「さあ皆さん。毒瓦斯を防ぐとなると、お互さまに知らぬ顔をしていられません。みんなで力を合わせて、この室を早く瓦斯避難室にしなければなりません。私は東京品川区の五反田では防護団の班長をしています。後備軍曹で、職業は鍛冶屋です……」

飛んだところまで口をすべらせるので、辻村氏があきれて、下から鍛冶屋の大将の服をひっぱった。

「……で、とにかく私が指揮しますが、文句はありませんか」

「委せるぞう……、よろしく頼むゥ……」

という声がかかって、鉄造は大満足だった。

「じゃ、まず眼張の材料だ。みなさん、使ってもいいだけの紙と布と、弁当の残りの飯とを出してください。その顔の長い学生君は紙係、青いネクタイの方は布係、その水兵服の娘さんは弁当飯係。すぐ集めにかかってください」

誰もいやな顔をしなかった。なにしろ、毒瓦斯だ。ぐずぐずしてはいられない。

材料は集った。それを手頃の大きさに裂く係ができ、材料を分ける係ができ、そしていよいよ全員が手分をして、眼張作業が始まった。紙と布とを飯粒で幾重にも隙間に張りかさねるのだった。