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くうしゅうけいほう
空襲警報
海野 十三
「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页
見れば両手に大きな新聞紙包を抱えている。中からゴロゴロ転がり落ちたのを見れば、なんとそれは木炭だった。
「炭なんか持って来て……お前さん、この暑いのに火を起す気かネ」
辻村氏の顔を見て、鉄造は首を横にふった。
「牛乳、ビール、サイダーの空壜を集めてください」
妙な物を注文した。――やがて七、八本の空壜が、鉄造の前にならんだ。
炭は女づれのところへ廻され、学生のピッケルを借りて、こまかく砕くことを命じた。一人の奥さんの指から、ルビーの指環が借りられ、それを使って、硝子壜の下部に小さな傷をつけた。それから登山隊の連中から蝋燭が借りられた。灯をつけると、硝子壜の傷をあぶった。ピーンと壜に割目が入った。壜をグルグル廻してゆくと、しまいに壜の底がきれいに取れた。一同は固唾をのんで鍛冶屋の大将の手許を見ている。
彼はポケットから綿をつかみだした。炭と綿とは、駅の宿直室から集めてきたのだった。――綿をのばしたのを三枚、抜けた壜底から上の方へ押しこんだ。
「炭をあたためて水気を無くし、活性炭にすれば一番いいのだが今はそんな余裕もないから……」
といいながら小さくした堅炭をドンドン中へつめこんだ。