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くうしゅうけいほう
空襲警報
海野 十三
「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页
そしてまた底の方をすこしすかせ、綿を三枚ほど重ねて蓋をした。そうしておいて壜底を、使いのこりの布で包み、その上を長い紐で何回もグルグル巻いてしばった。
「さあ、これでいい。――みんな手を分けてこのとおり作るんだ」
辻村氏が、目をクルクルさせ、その炭のつまった壜を高くさしあげて、
「団長、これは何のまじないだい」
「まじないという奴があるものか。これは防毒面の代用になる防毒壜だ」
「へえ、防毒面の代り? こんな壜が、どうして代りになるのか、わからないねェ。第一これじゃ、顔にはまらない」
「あたりまえだ。顔にはまるものか。……しかし、こうして壜の口を口にくわえればいい。口で呼吸をするのだ。鼻は針金をこんな風にまげ、こいつで上から挟みつけて、鼻からは呼吸ができないようにする。こうすれば毒瓦斯は脱脂綿と炭に吸われて口の中には入ってこない」
「なるほど、こいつは考えたね」
「形は滑稽だが、これでも猛烈に濃いホスゲン瓦斯の中で正味一時間ぐらい、風に散ってすこし薄くなった瓦斯なら三、四時間ぐらいはもつ。立派な防毒面が手に入らないときは、これで一時はしのげるわけさ……」
「な、なァる……」