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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

そのとき旗男は大事な持物を忘れなかった。右肩には防毒面の入ったズックの鞄を、また左肩には乾電池で働く携帯用のラジオ受信機を、しっかり身体につけて出た。

「うわーッ、あれあれ。爆弾だ、爆弾だ」

「あわてるなあわてるな。落ちるところを注意していろ!」

鍛冶屋の大将は大童で防護団を指揮していた。

町々からは恐怖の悲鳴がまいあがる。

ガラガラガラガラ!

ドドーン、ドドーン!

破甲弾よりは、ややひくめながら叩きつけるような大音響とともに、パーッとたちのぼる火炎の幕!

うわーッという凄惨な人間の叫び!

町まで出てきた旗男は実をいうと、気が違いそうであった。しかしここで気が違っては日本男子ではないと思って、一生懸命、自分の手で自分の頭をなぐりつけた。ゴツーン、という音とともに感ずるズズーンという痛み、そこでハッと気がついた。

「あッ、焼夷弾が……」

向こうの屋根に小型の爆弾が落ちたと思うと、パッと眼もくらむような光が見えた。

「こっちだ、こっちだ」

「おお」

鍛冶屋の大将が声を聞きつけとんできた。

「オイ皆、早く消しにゆけ。防火班、全速力だッ!」

手近にいた者が駈けだそうとすると、その前に、またつづけさまに三発、ドドドーンと白煙が天に沖する。