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ぬすむおんな
窃む女
黒島 伝治
1923(大正12)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,734 字 · 18 页
納屋へ行って探して見た。だが探しても見あたらない。彼女は頭の組織が引っくりかえったようにぐら/\した。すべての物がばら/\に離れてとびまわっているように見えた。物置きへまで持って行ってしまったような気もした。
「どうしたんだろう?」
一方では、物置きなどへは持って行った記憶がないのを十分知っていながら、単なる気持を頼って、暗い、黴臭い物置きへ這入って探しまわった。
「あんた、私の留守に誰れぞ来た!」
おず/\彼女は清吉の枕元へ行って訊ねた。
「いや。誰れも来ない。」清吉は眼をつむっていた。
「きみか、品が戻った?」
「いや。どうしたんだい?」清吉はやはり窃んできたのだなと考えていた。
「なんでもないけど。」
「なんでもないって、どうしたんだい?」
清吉は云いながら、唇の周囲に微笑が浮び上って来そうだった。
「いゝえ、なんでもないん。」
清吉は、黙っているのは良くないと思ったが、どうも自分からかくしたとは云い出せなかった。
お里は、お品か、きみがどっかへやったのかもしれない、と考えていた。清吉はうと/\まどろんで子供達が外から帰ったのも知らないことが珍らしくなかった。