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ぬすむおんな
窃む女
黒島 伝治
1923(大正12)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,734 字 · 18 页
あるいは、彼が知らないうちに子供が嬉しがってどっかへ持って行ったのかもしれない、彼女は、子供達が寺の広場で遊んでいるのを呼びに行った。
「あの人、もう知ってるんだ。知ってるんだ?」歩きながら、思わずこんな言葉が呟かれた。そして彼女はぎょっとした。
お品とおきみとは、七八人の子供達と縄飛びをしていた。楽しそうにきゃア/\叫んだりしていた。二人は、お里が呼んでも帰ろうとしなかった。
「これッ! 用があるんだよ!」
「なあに?」
「用があるんだってば!」彼女はきつい顔をして見せた。
二人の娘は、広場を振りかえって見ながら渋々母のあとからついて来た。お里は歩きながら、反物のことを訊ねた。
「お母あ、どうしたん?」お品が云った。
「あれが無いんだよ。」
「どうして無いん?――あれうちが要るのに!」
「お前達どこへも持って行きゃせんのじゃな?」
「うむ。――昼から家へ戻りゃせんのに!」
家へ帰ると、お里は台所に坐りこんだ。彼女は蒼くなってぶる/\慄えていた。お品ときみとは、黙って母親の顔を見ていた。と二人とも母が慄えるのに感染したかのようにぶる/\慄えだした。
「知っているんだ、あの人は知ってるんだ?」