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まどにさすかげ

窓にさす影

豊島 与志雄

「小説公園」1952(昭和27)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,068 字 · 26 页

青空文庫

幾人かの視線を、そして兄と利光さんの視線をも、身に感じたが、怯みはしなかった。

仏前に坐って、私はすっかり落着いた気分になった。蝋燭もお線香も燃えつきていた。私は新らしい蝋燭をともし、お線香を何本も立てた。

その時、私は祖母の白衣のことを思い起した。祖母が息を引き取り、その体がすっかり拭き清められると、羽二重の白無垢に着換えさせられた。その羽二重の白無垢を、私は前に一度も聞いたこともなければ見たこともなかった。へんに唐突なそして意外な感じだった。その衣は、いつ拵えられ、どこにしまわれていたのであろうか。

白布に包まれてる遺骨の箱を見ながら、私はやたらに幾本もお線香を立てた。

火葬とそれからお骨上げは、痛々しい感じだったが、直後に、清浄な感じに変った。墓窟へのお納骨は、陰欝な感じで、あとは寒々とした感じが残った。

帰りの自動車の中で、A叔母さんは私の手を握って囁いた。

「お祖母さまの笑顔とやら、どうだったの。見えなかったでしょう。見えなくていいのよ。もうそんなこと忘れておしまいなさい。これからがほんとに淋しくなるんだけれど、あなたも気持ちでは独り立ちしなければならないから、しっかりするんですよ。