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まどにさすかげ
窓にさす影
豊島 与志雄
「小説公園」1952(昭和27)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,068 字 · 26 页
」
それから、また天井の方へ眼をやった。
「のっぺらぽうのことなんか、忘れてしまいなさい。そのお話、だいたい、理屈っぽいよ。のっぺらぽうよりか、一つ目小僧とか、三つ目小僧とかの方が、愛嬌があっていい。一つ目小僧や三つ目小僧のお話なら、いくらもあるでしょう。楽しいことを考えるんだよ。気持ちをらくに持ちなさい。そうでなくても、あんた、神経が少しくたぶれてるからね。あたしのことにいろいろ気を使って、看護婦よりもよく世話してくれるものね。あ、そうそう、約束してあげましょう。のっぺらぽうのことなんか忘れてしまったら、そしたら、わたしが亡くなったあと、あの窓の硝子に、わたしのにこにこしてる顔を映してみせるよ。待っといで、きっとそうしてみせるから。その代り、気味わるいことなんか忘れてしまうんだよ。」
私は涙ぐんでしまった。
「いや、いやよ、そんなこと仰言っちゃ。」
祖母は腑に落ちない風だった。
「なにが、いやなの。」
「亡くなるなんて、そんなこといや。いいえ、きっとお癒りになるわ。お癒ししてみせるわ。あたし、学校を休んでも、どんなことしてでも、きっとお癒しするわ。」
私は顔を伏せてすすり泣いた。