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まどのしたをとおったおとこ
窓の下を通った男
小川 未明
「赤い鳥」1926(大正15)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,485 字 · 10 页
男は、頭を下げて、
「どうか、なにかおめぐみください。」と願いました。
その女の人は、男が思ったように、ほんとうにやさしい、いい人でありました。じっと、男の顔を見ていましたが、
「そういうように、おなりなさるまでには、いろいろなことがおありでしたでしょうね。」といいました。
男は、はじめて、他人からそういうように、やさしい言葉で問いかけられたのでした。
「よくお聞きくださいましてありがとうぞんじます。妻には死に別れ、頼りとする子供も、また病気でなくなり、私は、中風の気味で、半身がよくきかなくなりましたので、働くにも働かれず、たとえ番人にさえも雇ってくれる人がありませんので、おはずかしいながら、こんな姿になってしまったのです。」と、涙ながらに答えました。女の人も、やはり、目をうるませていました。
「私の父が、ちょうどあなたの年ごろなんですよ。都合のために、遠くはなれてくらしていますが、あつさ・さむさにつけて、父のことを思い出します。だれでも、若いうちに働いてきたものは、年をとってからは、楽にくらしていけるのがほんとうだと思います。それが、この世の中では、思うようにならないんですのね。