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まどのしたをとおったおとこ

窓の下を通った男

小川 未明

「赤い鳥」1926(大正15)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,485 字 · 10 页

青空文庫

金縁の眼鏡をかけて、色の白い、髪のちぢれた女の人が、やはり、汽車の窓から顔を出して、のぞいていたからです。その人は、数年前に、あの家の窓の下を通った時分に、しんせつに恵んでくれたその人そっくりでありました。

けれど、ただちがっていることは、いま、前に見る人は若く、あのときの人は、もっと年をとっていたことです。

「あの女の人の子供さんにしては、大きいし、この人は、あの人の妹さんであろう……。」と、男は思いました。

いつか、その女の人は、自分を見て、遠くはなれている父親のことを思うといったが、これは、またなんという奇妙なことであろうと、男は考えたのでした。そして、前に汽車の窓から、顔を出している若い女の人を、あの女の人の妹さんであると心に決めてしまいました。

若い女の人は、若いりっぱな服装をした紳士といっしょに乗っていたのでした。

男は、心から、その人たちの未来の幸福を祈ったのであります。

このとき、汽車の故障は直って、汽笛を鳴らすと、ふたたびうごき出しました。

男は、その汽車のゆくえをさびしそうに見送っていましたが、やがてとぼとぼと平野を一人であてなく歩いていったのであります。