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まどのしたをとおったおとこ
窓の下を通った男
小川 未明
「赤い鳥」1926(大正15)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,485 字 · 10 页
けれどこの年とった男は、いまにもとまりはしないかと空想に描きながら、汽車を見つめていました。
汽車は、だんだん近づいてきました。そして、見ていると、その速力がしだいにゆるくなってきて、彼が、あまりのふしぎに、胸をとどろかしながら見ていると、すぐ前にきたときに、まったく汽車はとまってしまったのでした。
男は、どうしたらいいだろうかとあわてて、すぐにも逃げ出そうかとしました。汽車に乗っている人々は、みんな窓から顔を出して、何事が起こったのだろうかと線路の上をながめていました。
運転手や、車掌や、汽車に乗っている係の人々は、汽車から降りて、機関車の下あたりをのぞいていました。
機械の力で動いている汽車が、機械に故障を生じた時分に止まるのは、なんのふしぎもないことでした。ただ、男が、そんなことを口の中でいったときに、偶然、機械に故障を生じたのがふしぎだったのであります。
男は、頭を上げて、汽車の窓からのぞいている人々の顔をながめていました。
「この人たちは、どこまでいくのだろう……。」と、そんなことを思ったのでした。
そのうちに、男は、はっとして、びっくりしました。