轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
どうてい
童貞
豊島 与志雄
「中央公論」1925(大正14)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,314 字 · 13 页
ぼんやりしていた心地を、ふいに、見覚えのある町角から呼び醒されて、慌てて乗合自動車から飛び降りた。それから機械的に家の方へ急いだ。
胸の中が……身体中が、変にむず痒くって、息がつけなかった。頬辺から鼻のあたりに、こな白粉の香がこびりついていて、掌で……それからハンケチで、いくら拭いても取れなかった。拭けば拭くほど、ぷーんと匂ってきた。
嬉しいようで、なさけないようで、ほーっと息を吐くと、その息の根が震えた。
晴れてるのか曇ってるのか、底知れぬ茫とした空だった。……が、宵闇に浮び出てる軒燈の灯が、きらきらと、珍らしくて美しかった。
よその家へでも迷い込むような気持で、静に自家の玄関へはいった。誰も出迎える者がない……よかった、と思うとたんに、女中が立ってくる気配がした。それが却ってきっかけとなって、つかつかと茶の間へはいっていった。
「まあー、朝から出たっきり、どこへ行っていました。」
「井上君のところで遅くなって……。」
「そう、御飯は。」
「済みました。」
「やはり井上さんのお宅で……。それならいいけれど、こんどからは、御飯はどうするかちゃんと云っておかなければ困りますよ。