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わらいについて

笑について

岸田 国士

「人生読本3」春陽堂書店、1954(昭和29)年6月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,526 字 · 13 页

青空文庫

ということになつて、両方とも自説を固守しているので、そこで婦人の夫は、「ちよつと待つて下さい。」とたまりかねて口を出しました。「いや/\、産科医としては」、「いや/\、誰が何と言おうと内科的見地から」というような議論になつた。最後には、産婦はとう/\横腹に手を当てて恐る/\ふき出したのであります。これは一つの喜劇的な場面であります。何がおかしいのかというと、つまり、この二人のお医者さんは、この職業的な意識がさきに出て、自分が一人の病人を治すために診察する責任のある医者だということを忘れているという、実に大きな矛盾が、ここに暴露されているからです。そして、そのことに自分が気が付いていないことが、実に滑稽なのであります。こういう例を挙げますと、幾らでもありますけれども、我々は、この場合に、この産婦の主人のように、この二人の医者に対して怒つてしまつては、これは話がそれまでであります。この二人のお医者さんの姿を見て、幾分は心の中でおかしみを感じながら、而も、この場合、最も適切な措置を講ずるのが、これが人間として一番聡明な道と思うのであります。では、これで、私の話を終ります。