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かさおりはんくろう

笠折半九郎

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社 、1941(昭和16)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,004 字 · 26 页

青空文庫

「拙者はこういう話を聞いているんだが」

久之助のねちねちした態度をとりなすように、一人が側から口をんだ。

「なあ笠折、あの日貴公はお上から、畔田と喧嘩をしたことでお叱りを受けただろう、是は単なる噂にとどまるかも知れんが、畔田がお上にその事を申上げたので、それでお上がお怒りになったということを聞いたぞ」

「それは有りそうなことだ」

別の一人が頷いて云った。

「畔田としては城中満座のなかで果合いを挑まれたのだからな、その返報としてもそのくらいのことは有るかも知れん」

「止めて呉れ、どうかみんな止めて呉れ」

半九郎は堪り兼ねて云った。あまりその声が悲痛だったので、みんな驚いて眼をあげた。半九郎は抑えつけたような声で、まるで自分自身に挑みかかるように云った。

「畔田がどんな人間か、拙者は誰よりも熟く知っている、そういう噂は人を毒するだけだ、どうかもう蔭口や噂は止めて呉れ、十七人の組下に対しては、拙者が直ぐに番頭としての責任を執る、だからもうこんな話は是だけで打切りにして呉れ、もう沢山だ、本当にもう沢山だ」

それだけ云うと、半九郎は立ってその席を去った。

櫓番の支配は寄合役である、半九郎は辞表を支配役に差出して下城すると、家人に酒を命じて強かに呑みはじめた。