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だいよじげんのおとこ

第四次元の男

海野 十三

「ユーモアクラブ」1940(昭和15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,156 字 · 18 页

青空文庫

わたくしは、そのとき、咽喉のところまで出てきたことば――藤田さん、わたくしが見えるかね、わたくしの身体が――と聞きたいのを懸命に我慢した。そしてわたくしは、自分の背後をふりかえってみたのであった。それはもしや藤田師が、わたくしの後に立っている他の者に対して、話しかけたのではないかを知るためだった。

その結果、わたくしは、初めて、大安心をすることができた。わたくしの後には誰もいなかった。廊下は、奥の方まで素通しで、猫一匹、そこにはいなかった。

「やあ、藤田さん。ゆうべは、だいぶん儲けたらしく、機嫌がいいね。はははは」

と、わたくしは、初めて笑いごえを立てた。

「うふ、ゆうべだけじゃないよ。このごろは、亡者ども、一般に金まわりがよいと見えて、見料の外にチップを置いていくよ。呆れた時勢だな。はッはッはッはッ」

藤田師の笑い声は、わたくしにとって、千両万両の値打があった。わたくしの身体は、たしかに見えるのである。その証明が、この藤田師によって、りっぱに立ったのである。わたくしは、天にものぼらんばかりの巨大なる悦びを感じた次第であった。

この悦び、この安心!

だが、わたくしにとって、解けぬ謎は、あの夜の戸山ッ原の怪事件であった。