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だいよじげんのおとこ
第四次元の男
海野 十三
「ユーモアクラブ」1940(昭和15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,156 字 · 18 页
大根が、静かなる水面に交わり、しずかに下に下っていったに過ぎないのだ。だが二次元の世界の生物には、われわれが認識しているような大根の形をついに想像出来ないのだ。二次元の者には、三次元の物を認識する能力がないのだ」
「ふーん、君はなかなか科学者だ」
「そうだ、人相見の術は、科学なのである。そこで君のことに帰るが、わしの観相によると、君は三次元の生物ではなく、四次元の生物であると出ているのだ。そんなばかばかしいことがあってたまるものかと思うが、そう出ているんだから、よういわん。わしは、きょうかぎり、人相見をよそうと思う。インチキ極まる術だ」
わたくしは、専ら、溜息の連発をやらかしただけであった。藤田師の言は、切々として、わたくしの胸をうった。といって、ここで木下藤吉郎のように、(いや、わたくしは今に大成功をする、お前さんの占いは正しいのだ)と大見得を切る元気もなかった。それよりは、なぜわたくし自身が、そうした呪わしい人間――いや生物に生れついたかという歎きであった。と同時に、果して四次元の生物ならば、わたくしの実体は如何なる形のものであるか、ということに対する好奇心に、ゆすぶられた次第であった。