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せいしんびょうおぼえがき
精神病覚え書
「文藝春秋 第二七巻第六号」1949(昭和24)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,027 字 · 18 页
小林はルリヂヤス何とかと云った。僕らは酒をのんで話を交していたので、こまかいことは忘れてしまったが、このルリヂヤス何とかという表現が、二人の手記に同じ言葉が用いられているので、小林はゴッホもテンカンじゃないかと疑りだしているのである。
これだけの類似でゴッホもテンカンだと即断するのは、もとより不当であり、だいたい分裂病の症状は多種多様で、無限の型がありうるから、尚更、わからない。
然し、分裂病の型が多種多様だということについては、つまり、精神病学がまだ幼稚であり、多くの型を一とまとめに分裂病とよんで済ましているだけのことではないかと思われる節が多い。
事実、精神については、医者のみならず、文士も、哲学者も、その実体に確たるものを知り得ていないではないか。
小林秀雄はフロイドの方法が東大に於て使用されているかどうかをきき、使用していないという僕の返事に、ちょッと意外な顔をした。
僕自身発病して入院するまで、フロイドの方法をかなり高く評価していた。然し、入院して後は、突如として、フロイドの方法はダメだという唐突な確信をいだいた。
大体、分裂病が潜在意識によるかどうかは疑わしいが、僕の場合は、鬱病であり、それにアドルム(催眠薬)中毒の加ったものである。