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せいしんびょうおぼえがき
精神病覚え書
「文藝春秋 第二七巻第六号」1949(昭和24)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,027 字 · 18 页
分裂病に比べれば、鬱病には、まだしも、潜在意識の作用はたしかにある。何かゞ抑圧されていることが、病状を悪化させる一つの理由となっていることは確かである。
東大で鬱病を治療するには、主として持続睡眠療法であり、ほかに電気療法なども用いるらしい。(分裂病にはエンシュリン、電気、或いは脳手術である)
僕のうけた治療は持続睡眠療法であった。これはある種の催眠薬によって、人工的に一ヶ月ほど昏睡させるものである。この昏睡の期間に、患者は食事をとり、用便をし、時に医者と話を交し、僕の場合は本や新聞を片目をつぶりながら読んでいたりした由であるが、それらのことは全く覚醒後は記憶に残っていない。一ヶ月睡って目覚めた時、一晩睡ったとしか思わない。はじめは、一ヶ月の時日のすぎていることが、どうしても信じられないものである。この傾向は、治療としての持続睡眠にのみ有るものではなく、催眠薬の中毒病状がすべてそうで、入院直前、僕がアドルムを多量に用いて(四五十錠ずつ二十四五日間用いた)昏睡をもとめた時にも、ふと覚醒して、一夜ちょッと眠った自覚しかないのに、一週間がすぎており、どうしても信じられないことが三度ほどあった。