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こうもうけいせい

紅毛傾城

小栗 虫太郎

「新青年」1935(昭和10)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 页

青空文庫

「のうフローラ、姉の才量で、今日から城内に、グレプニツキーを入れることにした。そして、黄金郷の在所を、じわじわ吐かせることに決めたのじゃ」

と言った横蔵の唇が、いつになく物懶げであったように、それから数日後になると、果たしてステツレルの出現と合わしたかのごとく、城内には、悪疫の芽が萌えはじめてきた。

それは壁という壁から立ち上がる、妖気でもあるかのように、最初横蔵に発して、さしも頑強な彼も、日に日に衰えていった。錐のような髯が、両頬を包んで、灰色がかった皮膚から、一日増しに弾力が失われていくのだ。

したがって、フローラの決意も、やがて下ろうとする自然の触手を思うと、いつか鈍りがちになるのも無理ではなかった。

ところが、それから一月後のある朝、思いがけなく横蔵が、胸に短剣を突き立てられ、うねくる血に彩られた、無残な姿を発見された。

その日は、垂れこめた雲が、深く暗く、戸外は海霧と波の無限の荒野であった。その夜慈悲太郎はフローラと紅琴を前にして、彼が耳にした、不思議な物音のことを語りはじめた。

「ちょうど、寅の刻の太鼓を聴いたとき、風にがたつく物の響き、兄の吐くうめきの声に入り交じって、それは、薄気味悪い物音を聴いたのじゃ。