轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
こうもうけいせい
紅毛傾城
小栗 虫太郎
「新青年」1935(昭和10)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 页
のう姉上、儂の室の扉の前を離れて、コトリコトリと兄のいる、隣室に向かう足音があったのだ」
「いやいや、何かそちは、空想におびやかされているのであろうのう。気配とやらいうものは、もともと衣としか見えぬ、ちぎれ雲のようなものじゃ」
「ところが、それには歴然とした、明証がありおった……。通例の歩き方で、二歩というところが一歩というぐあいで、その間隔が非常に遠いのじゃ、それで、なにか考えながら歩いておったと儂は推測したのだが……」
「おお、それでは……」
とフローラは、いきなり紅琴の腕をつかんで、けたたましく叫んだ。
「それでは、父の亡霊が歩んでいたとおっしゃるのですか。中風を患った父は、不自由なほうの足を内側から水平に回して、弧線を描きながら運ぶので、自然そんなぐあいに聞こえるのでございますよ。ああ、あの父が、チウメンで殺された、アレウート号といっしょに、沈んだはずだった父が……」
フローラは、心痛と恐怖のあまり、歯はがちがちと打ち合い、乾いた唇から、嗄れたうめき声を立て続けるのだった。
しかし、不倫の悪霊ステツレルは、どうしたことかそれなり姿を現わさなかったし、また横蔵の、下手人とおぼしいものも発見されなかった。