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こうもうけいせい

紅毛傾城

小栗 虫太郎

「新青年」1935(昭和10)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 页

青空文庫

船内でも慈悲太郎の部屋でも、一つはそもじをねらった荒くれ漢、また一つが――この私だったと聞いたら、驚くであろうのう」

そう言って、高い木沓を脱ぐと、なかから、それは異様なものが現われた。双方の足趾は、いずれも外側に偏っていて、大きな拇趾だけがさながら、大箆のように見えるのだった。

それは、言わずと知れた、纏足だったのである。

「これを見たら、慈悲太郎の聞いた、足音の主が何者であったか、いまさらくどくどしく、説き明かすまでのこともないであろう。私は、イルクーツクの日本語学校で育てられたとき、漢人に興味を持った、魯人の一人にもてあそばれて、かような痕を残すようになった。それこそ、木沓を脱いだら、壁に手を支えぬと、私は歩けませぬのじゃ。のうフローラ、なぜに私は、かけ換えのない二人の兄弟――横蔵と慈悲太郎を殺めたのであろう。それは、そもじを、太夫姿に仕立てたのを見てもわかるであろうが、それとても、そもじが愛おしく、同胞とはいえ妬ましく、私の小娘のようにもだえ、またあるときは、鬼神のような形相にもなって、なんの不安もなく懸念もなく、いちずに愛の魔術に、愉しく魅せられ酔わされておったからじゃ。