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おだのぶなが

織田信長

坂口 安吾

「季刊作品 第一号」創芸社、1948(昭和23)年8月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,950 字 · 36 页

青空文庫

悪逆陰険の曲者だったが、兵法は達者であった。信長同様、長槍の利をさとり、鉄炮の利器たるを知って、炮術に心をくだいた。明智光秀は炮術の大家であるが、斎藤道三について学んだのだと云われている。

こういう曲者が隣国にいて、信長の父は、隙をねらって攻めたり、攻められたり、年来の敵手であるから、信長のモリ役の平手中務は年少の信長に道三の娘をめあわして、後日にそなえておいた。

道三は政略結婚、結構。相手がその気なら、こだわることはない。聟の一匹二匹、ひねり殺すに、こだわる気持が元々ないのだ。

けれども、道三は、さすがに悪党のカンである、大ウツケ者、バカ若殿。この御仁の代には必ず家がつぶれる、という、大評判。ほかならぬ織田家の家来の定説なのだ。然し、さすがにこの悪党は、世の定説のごときものを、そのまゝ、ウノミにしなかった。

人があの小僧はバカだというたびに、ほんとか、なぜだ、ときいた。そして、バカではあるまい、と言うのであった。

フンドシカツギのマゲをゆい、ユカタの着流しに、片ハダぬいで、腰に火ウチ袋やヒョウタンを七ツも八ツもぶらさげて、人の肩につるさがって、瓜をほおばり、餅をかじりながら道を歩いているという。