轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おうがいのけんこうとし
耄碌寸前
森 於菟
森於菟『耄碌寸前』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鴎外の健康と死、観潮楼始末記、解剖随筆抄、魂魄分離、死体置場への招待、なきがら陳情。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,925 字 · 89 页
大正十一年一月十九日は満六十年の生誕日すなわち還暦というので、縁起を気にする母は父に赤いチャンチャンコを着せようとした。そうしたつまらぬことにことさら異を樹てないようになっていた父は着ぶくれた綿入の上にそれを一着して祝膳につき、父母と弟妹とのほかに当時は廊下つづきながら別棟に家庭を営んでいた私達夫婦も参列したが、父が非常に老けて腰を曲げているのが気になった。その年の三月十四日には私が妹茉莉と共に欧州に向って出発するので、父も東京駅まで送ってきてくれた。その時も父の姿が一段と衰弱して顔も痩せ身体も小さく前かがみになっているのが眼に残り、それが私の父を見た最後であった。
ドイツで父から受け取った最後の手紙は電報より後にとどき、父の口述を母が筆記したもので、鴎外全集の書簡篇にあるが、おれにも父の病気(萎縮腎)が出たようだとあって胸のことには触れていない。またフランツ・ヨゼフの水をのむと通じがついて気持がよいがあまりくだるためからだが弱るとあったので、フランツ・ヨゼフとは何かと額田君にきいたら、それはあのころドイツから来た鉱泉なのだという話であった。主治医として当時の額田晉君の話は当時の「新小説」