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おうがいのけんこうとし

耄碌寸前

森 於菟

森於菟『耄碌寸前』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鴎外の健康と死、観潮楼始末記、解剖随筆抄、魂魄分離、死体置場への招待、なきがら陳情。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,925 字 · 89 页

青空文庫

観潮楼始末記

上

これは父鴎外が観潮楼を本郷区駒込千駄木町二十一番地、団子坂上に新築してから、その命を終る日までの大部分をここに過した記録を私の思い出す順序に書きとどめ、さらに父の死後私が台北帝国大学に赴任した留守に、二階建の楼が失火で焼け落ちたまでのことをつづったのを、彼の地の「台湾時報」という雑誌に寄稿したものであった。戦後私が帰国してから『父親としての森鴎外』と題する随筆集(昭和三十年四月、大雅書店)を出版するに際してこの文を加え、なお旧稿の終りに「追記」として、父の旧宅の平家の部分で私の弟の類が譲り受けて住んでいた家屋が東京の最初の空襲によって全焼したこと、かくして広い意味での観潮楼跡と呼ばれた鴎外旧宅跡全部を私と弟の名で文京区に寄付し、昭和二十九年七月九日、父の三十三回忌を記念して「沙羅の木」の「詩壁」を建てたことを述べた。今度この随筆集に収めるに当って、追記の後にかの詩壁除幕式の日に発足した鴎外記念会館の計画の進行状態を述べ、昭和三十七年一月十九日が鴎外生誕一百年に当ることを明らかにしておきたいとおもう。

上

観潮楼は私の魂の故郷である。その余りに惨ましい最期を思うと胸が痛むので、私は今までそれを語りたがらなかった。