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おうがいのけんこうとし

耄碌寸前

森 於菟

森於菟『耄碌寸前』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鴎外の健康と死、観潮楼始末記、解剖随筆抄、魂魄分離、死体置場への招待、なきがら陳情。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,925 字 · 89 页

青空文庫

そして雲中語の会合がはじまった。それは露伴、緑雨、学海、篁村、紅葉、鴎外、思軒の七耆宿が新刊小説の合評をされたのであった。頭取がその小説の梗概を述べ、贔負とか、穿鑿家とか、真面目とか、江戸ッ児とか、それぞれの名のもとに批評をするので、当時の文壇の目を欹たしめたものであった。自分は員外としてよく遊びに行って、批評以外のおもしろい雑話をきいてをり、時には筆をとった事もあった。紅葉山人は殆ど名を列しただけ、学海居士が原稿を郵送された事は極めて尠かったやうである。場所は森さんの家の二階で、小さな机を前にした人、柱によりかかった人、縁側に出てをる人などさまざまで、夏の暑い日は皆浴衣に着かへたりした。夕方になって酒が出ると、篁村さんは盃を手からはなさず、思軒居士は疳高い声で話し上手にいろいろ話す、緑雨は折々皮肉な語をまじへる。筆をとっては思軒居士が早く緑雨が最も遅く、森さんはいつもこごみがちになって、例の厚い西洋紙を半紙形に切ったのに細い真書や、又は鉛筆ですらすらと書かれ、たまたま消す時は黒くぬりけし、若しくはゴムで丁寧に消された。夜はいつも更けて、緑雨は泊った事も度度であった。