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おうがいのけんこうとし

耄碌寸前

森 於菟

森於菟『耄碌寸前』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鴎外の健康と死、観潮楼始末記、解剖随筆抄、魂魄分離、死体置場への招待、なきがら陳情。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,925 字 · 89 页

青空文庫

に描かれたおけいさん)に、そのころからたびたび訪問を受ける機会があったので父の病床のことをきいてみたが「苦しいなどとはひと言もおっしゃらないで、ただ時々両手で腰を押えて顔をしかめていらっしゃいました。」というだけで何も知らぬようであった。それで、私としては主治医の話を信ずるほかなく、母の真正直な話に反撥したことを慚愧する次第なのである。

父の三十三回忌(昭和二十九年七月九日)の翌日私は佐藤春夫さん御夫妻と同行して郷里島根県津和野町に向った。忌日を三日遅らせてここでも旧宅の前庭に建てられた詩碑の除幕式が行われたからで、こちらの方は佐藤さんが『うた日記』の扣鈕の詩を選んで筆をとって下さったのである。父の病気の話はその旅行中、津和野でも、また帰途私一人で行った祖父森静男の生地山口県防府市でも講演会の際に話した。こんなわけで一度に方々で公開した形になったが、書いたことはまだない。それも放送より前に書くつもりだったのが日常の忙しい生活のためにだんだんと遅れたのである。

さて父鴎外の健康について具体的な叙述をするにはまずその家族歴を略述せねばなるまい。鴎外の祖父森白仙(また玄仙、綱浄)は津和野藩主亀井家に医として仕えた。