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おうがいのけんこうとし

耄碌寸前

森 於菟

森於菟『耄碌寸前』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鴎外の健康と死、観潮楼始末記、解剖随筆抄、魂魄分離、死体置場への招待、なきがら陳情。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,925 字 · 89 页

青空文庫

以上の中の一つで私が主として行っていた学校での話で、ある年の解剖実習期のまさに終らんとするころのことである。私は一日帝大の某教授に呼びつけられた。「君の行っている○○○○では、焼場へやる死体の骨を盗んで、代りに犬の骨を入れて置くそうだと言って、養育院のU先生がひどく怒っていた。早く行ってあやまって来たまえ。」教授ははなはだ御機嫌斜めである。それもごもっともで、死体数において断然日本一を誇り、わずかに欧米の二流大学の死体数と肩をならべられようかと思われる東京帝大の解剖学教室の死体、その大多数は東京市の養育院から供給されるのであり、U博士はその配給の実権を握る医長で、下手に怒らせると東大そのものが死体材料枯渇の危険にさらされるわけである。

私は大いに狼狽して早速その学校の解剖学教室にかけつけ、取り調べのため全職員を召集した。全職員といったところで私以外の教授二名は東大の助手両君で、講義の分担と学生の実習の時に代り合って見廻るだけ、いつもこの教室にいる人でなく死体の取り扱いには関係していない。ほかに助教授も講師もなく助手一名、これが実は死体取り扱いと標本製作とのために入れた雇員、日本に籍はあったが、当時日本の植民地であった某所の生れ、郷里で初等教育を終えた後東京に出て、ある工場に働いていた男、現在は夜学の中学校